田中の失敗②
学習進度に余裕がある子どもには、学年を越えての予習をしています。
けれども、何をどのくらい与えるかの案配には気をつけなければなりません。
ずいぶん前の話です。
Fさんは小学生の低学年から田中塾に通い始めました。
集中力があり一生懸命取り組む子どもで、1年間で学年の単元を2年間分こなすスピードがありました。
本人は先に進むのがうれしく親御さんもそう希望されていたので、塾ではどんどん先取り学習をしました。
田中もそれが子どもには良いことだと誤解していました。
しかし5年生で中2の単元を学習するようになった頃から、雲行きが怪しくなってきました。
一つ目の変化は、Fさんが「自分は優れているからこんなに予習ができるのだ」と勘違いをし始めました。
さらに「中学の勉強ができるから年上の小6より自分の方が偉い」と傲慢さも表れました。
同じ年の子どもたちからだんだん煙たがられるようになりました。
二つ目は、能力を過信し始めたので努力をしなくなりました。
これまで勉強が順調で先取りができたのは、Fさんの能力が秀でていたのではなく、他の子どもより時間をかけたくさんの問題を解いたからです。
そのことがFさんにはわかりませんでした。
プライドだけ高く、(それは人に聞いたり、『わからない』と素直に言えないということです)努力を怠るようになると、成績は目に見えて下がっていきます。
ずっとトップを走っていたFさんが、後から追いかけてくる子どもたちに追いつかれ、抜かされる時がきました
こういう場合はあっさりと抜かれます。
そうなるとFさんは、自分に対する自信をも喪失することになりました。
今では田中は、学力に余裕のある子どもにたいして、いたずらに浅く次々と教えることは避けています。
ひとつの問題をいろいろな解き方で解かせるなど、より深く理解させるようにしています。
この失敗から学んだことです。
そのあとのFさんは精神的に落ち込む時期をしばらく過ごしましたが、再びトップに返り咲きました。
今では謙虚な姿勢を決して崩さない、秀才肌の青年に成長しています。